夏に着るシャツを選ぶとき、素材の名前だけで判断していないだろうか。「リネン」と書いてあっても、織り方や混紡の比率によって、着心地はまったく異なる。兵庫県西脇市の播州織は、江戸時代から続く先染め織物の産地で、糸を染めてから織るという工程が、生地に独特の深みと通気性を与える。
播州織とは何か ¶
播州織は、兵庫県西脇市を中心とした地域で生産される先染め織物の総称だ。「先染め」とは、糸の状態で染色してから織る手法で、後から布を染める「後染め」と比べて、色の深みと耐久性が高い。西脇市は「日本のへそ」と呼ばれる地理的中心に位置し、加古川の水を利用した染色業が江戸時代から栄えてきた。現在も小規模な織物工房が数十軒残っており、それぞれが独自の組織と配色を持つ。
リネンと綿の混紡が夏に向く理由 ¶
純粋なリネン100%の生地は、吸湿性が高い反面、肌への当たりが硬く、着始めはごわつきを感じることがある。「糸元」が開発した経糸麻・緯糸綿の平織り生地は、リネンの通気性と綿のやわらかさを組み合わせた処方だ。緯糸に綿を使うことで、肌に触れる面がやわらかくなり、汗をかいても張り付きにくい。洗濯を重ねるごとに繊維がほぐれ、三年目以降に最も着心地が良くなるという特性がある。
縫製と仕上げの細部について ¶
播州織の生地を活かすには、縫製の精度が重要になる。Hushed Bay Tideが扱うリネンシャツは、岡山市内の小さな縫製所が担当し、袖口のステッチだけ手縫いで仕上げている。手縫いのステッチは、ミシンのものより糸の張力が均一でなく、洗濯による収縮への追従性が高い。細かい部分だが、長く着るほどにその差が出てくる。
お手入れの方法 ¶
リネン混紡の生地は、洗濯機の手洗いコースで問題なく洗える。乾燥機は繊維を傷めるため避けること。脱水後はすぐに形を整えて干し、完全に乾く前に軽くアイロンをかけると、シワが伸びやすい。アイロンは中温、スチームを使うと効果的だ。洗うたびに少しずつ柔らかくなる変化を、楽しんでほしい。
播州織のリネンシャツは、今シーズンのコレクションに一点のみ在庫がある。実際に手に取って確かめていただくために、来店予約をお待ちしている。